ところで、先日掲載したこの写真の中で、一体いくつの業種が関わっているのかお分かりになるだろうか?
正解は、
1、大工
2、塗装
3、石
4、内装(床)
5、シーリング
の5業種である。(菅沼)
十和田石の接着の様子。
十和田石は『凝灰岩』である。
接着前にはこうして水に浸ける。
同じく凝灰岩である天然砥石も、研ぐ前に水に浸ける。
水に入れると、しばらく気泡が出続ける。
接着モルタルを塗ったところ。最初に全面に薄く塗り付ける。
接着の直前にモルタルを団子状に盛り付け、圧着する。
貼っているところは堀ごたつの中である。(菅沼)
外壁の雨掛かり部に使われる板壁。
左官壁の風化を防ぐために下部の方ではこのような方法が採られてきた。
厚さ四分の杉板を胴縁に留めた後、このように『ささら子』で板を固定する。
この押し縁で杉板の反りを押さえる。
ささら子を作るための型板。
杉板の反りに合わせて丸みが付けてある。
この加工にはバンドソーが使われる。
丸ノコを横にスライドさせて切削する専用の加工機もあるが、私は実物を見たことがない。
出隅はバンドソーでの加工が出来ない。
これだけはノミによる加工が必要である。
和風の住宅では当たり前のように見かける板壁であるが、製作には手間が掛かっている。(菅沼)
ユニットバスではない現場製作の浴室では、湿気や水掛かりの対策に工夫が必要である。
サワラの羽目板が浴室に張られたところ。
基本的には水を掛けてはいけない。
しかし、もし水が掛かった場合には壁の内部へ水を呼び込んではならず、浴室内へ水を排出する必要がある。
ここには非常に細かい配慮がある。
サワラ羽目板の下端小口には勾配を取ってあるのが分かる。
石材(十和田石)との境目にある見切り材はL字型に加工されており、奥には立ち上がりがある。
羽目板の裏面を伝ってくる水滴はこの見切り材で内壁表面へ出される。(菅沼)
壁の仕上げ工事においては『ちり』の処理が見栄えに影響を与える。
これは左官壁の『ジュラクサンド』(合成樹脂接着剤を含有する製品)による壁のちり。
左官職はこの柱のちりを刷毛でふき取って仕上げる。
こちらは塗装(AEP)による壁のちり。
ほんの少しだけ枠材に塗膜を掛けている。
塗装仕上げは『マスキング』で決まるといっても過言ではないだろう。(菅沼)
改修工事が始まって2ヶ月が経ち工事は仕上げ段階に入っています。
キッチンが取り付けられました。L型でワークスペースが非常に広いキッチンです。
人工大理石は2箇所で溶接しています。
既存部分との違和感をなくすために外壁をウォールナット色で塗装しているところです。
塗装しない木製建具の枠とのめりはりがつきます。
タイルの外壁を解体して南京下見板張りにします。大工の高度な技術を要するところです。
浴室入り口の引戸のレール部分を施工しています。真鍮のレールをモルタルに埋めこんでいます。ミリ単位の精度を求められます。
収納を造作しています。観音開きの戸は少し大きめにして枕棚も使いやすいようにしています。上部は垂れ壁を設けず開放して、湿気がこもらないように配慮しました。
中段はひのきの縁甲板を使いました。最近の押入れはセットものを使うことも多くなりましたが、今回は職人の手作りです。
十和田石でエプロンを造っている様子です。湯桶を床よりも30cmほど上がったカウンターに置いて使います。
ヴィブラートという電動工具で石に振動を加えながら圧着していきます。同時にレーザーで水平を確認します。ミリ単位の精度を要する慎重な作業です。(光治)
十和田石を張る下地を作っているところです。
上部はサワラの板張りになります。
一度塗りつけたモルタルを荒らして、2度目のモルタルを塗ります。
直接石を張る面になるので、慎重な作業になります。
エプロン部分の下地をブロックを積んで作っています。
2段になっている下の段は湯桶を置くカウンターの下地になります。
右側には風呂蓋を置くスペースをとりました。(光治)
ヒノキ風呂が搬入されました。重量は100キロ近くあります。
設置までとりあえず倉庫で保管していますが、倉庫を開けるたびにヒノキの香りがします。
秋田県から直送した十和田石。風呂の床と壁の腰部分に張ります。
見た目も触り心地も温かみを感じる石です。
造作の洗面台。天然石の洗面ボールを設置します。バックガードはサワラの羽目板を張りました。羽目板を縦張りにしたのは職人の提案で手間はかかりますが高級感が出ます。インパクトのある天然石の洗面ボールとバランスが取れました。下部は扉をつけて収納にします。(光治)
長柄の家の増築の状況。
風呂と脱衣場が無かった家に、左写真の左側のように二部屋が増築された。
風呂場の窓は、北側の山の森を見るために2枚引き込み木製建具を計画している。
右2枚の写真は、付いたばかりの外付け窓枠の様子。
この辺りは大工技術の見せ所である。
材料には桧の無節を使っている。
窓枠が付くと、内観・外観共に完成に近づいて、仕上がりが想像出来るようになる。
右の写真は、風呂桶に座って見えるであろう北側の山の景色である。(菅沼)
浴室は十和田石とサワラの板で仕上げます。下地の防水はFRP防水を選択しました。
防水層の強度を出すために施工するガラス繊維。
ガラス繊維を貼り付けた上にポリエステル樹脂を塗りつけていきます。
この工程を2回繰り返します。
タイルや石の下地となるモルタルを塗りつけるワイヤーメッシュを固定する金物。トンボと呼ばれています。
トンボは釘を使わず、コークボンドで貼り付けます。浴室は耐食性に配慮してなるべく釘やビスの防水層の貫通を避けて施工します。(光治)
長柄の家・増築工事を別の視点で。
このような増築現場では「手刻み」が生きる。
増築工事では既存建物の歪みを読み取らなくてはならない。
現場で実物を測りながら墨を付けることが正確な工事を裏付けることになる。
現場で刻まれた米松の桁。
既存の柱には差し口を刻んでおく。
昔の柱は一本ごとに太さが違うことなど当たり前である。
垂木欠きがピッタリと揃うことで刻みの正確さを証明している。(菅沼)
土台が敷き終り、構造材の刻みに入りました。増築工事では既存の建物との取り合いがあるために図面通りに加工すればいいとゆうわけではなく、既存部分の歪みや今回の場合は増築部分の高さに配慮しながらの刻みとなりました。
軒、けらばの出は70cmで大きめにとり、木製建具への雨がかりを抑えています。
浴室の天井の高さを確保するため、大工、板金(屋根)の職人と現場で打合せを行い、増築部分の高さをできる限り上げてもらいました。予定以上の高さが取れそうです。
既存の和のイメージを壊さないよう垂木、軒天は化粧にします。屋根はガルバリウム鋼板縦はぜ葺きとなります。(光治)
内部の壁の解体が行われました。
土壁の下地として使われていた竹の小舞です。
解体した壁には間渡し竹を差し込む穴がありました。
この間渡し竹と貫に割竹を縄で編みつけると上の写真のような竹の小舞になります。
小舞に土を塗りつけ乾かす作業を何度も繰り替えし、壁の下地を作っていきます。
築40年ぐらいの建物と思われますが、労力と時間の費やし方は昨今の建物とは比較にならないものがあります。(光治)
φ100mmの無筋コンクリート基礎にコアを抜く様子。
コア抜きのホールソーをどうやって固定するかが難しい。
小さなコンクリートアンカーを打ち込んで固定する方法もあるが、この機械は真空ポンプで密着させて固定する。
機械の仕組みは、ホールソー本体と、注水ポンプ、真空ポンプの3つで構成される。
青い箱が真空ポンプで、青いホースで空気を抜いている。
黄色いホースは注水ポンプから出てくる水をホールソーへ送る。
コアを抜き終わったところ。
真空を作り出す密着器が私の最大の関心事なのだ。
この黒いパッキンは柔らかく、これでコンクリート製の基礎の表面に密着する。
それにしても、あのざらざらな表面によく密着できるものだ。
これによってアンカーを打ったり補修したりという手間が省けるのだから、施工者にとっては「発明」と言えるほどの省力化をもたらしたことだろう。
この時期、建物の北側には昼間でも蚊が多い。
蚊取り線香や虫除けは必需品である。(菅沼)
長柄の家で増築部分の基礎工事が着工しました。
この増築部分には浴室と洗面所を計画しています。
根切りをして砕石を入れている様子です。
重機を入れず、手作業で丁寧に行います。
既存部分の基礎と一体化させるために差し筋を取り付けます。
差し筋の先はアンカーの機能があり、穴に差しこんでハンマーで叩き込むと
固定される仕組みになっています。
丁張りの糸を基準にして、ベースと立ち上がりの鉄筋を組んでいきます。
同時に排水管を逃げておき、明日のベースコンクリート打ちに備えます。(光治)
長柄町で改修工事が始まりました。
建物の改修の前に単独処理浄化槽を撤去して合併浄化槽を設置します。
浄化槽のサイズはH1550×L2190×W1120とコンパクトですが、汚水の浄化能力は非常に高く、BODの除去率は90%以上あります。
掘削作業がなかなか進まない頑強な地盤で千葉県ではこの手の地質を「岩盤」と呼んでいます。岩ではないのですが・・・。
浄化槽をユンボで吊り水平に設置します。土を埋め戻すときに浄化槽が転ばないように水をいれ、地盤面に合わせてマンホールのかさ上げを行い、完成です。
長柄町では、合併浄化槽の設置工事費の大半を負担し、維持管理も町で行うという特殊な制度があります。合併浄化槽のレンタルみたいなものです。補助金制度が少なくなる中、なかなかいい制度だと思います。(光治)