木造建築物では傷み易い部位の筆頭である「軒先」の改修の記録。
切妻屋根の軒天井において、軒先側を水平にすると、妻側の軒天井との取り合いはこのような形状にせざるを得なくなる。この形状は大変多く見掛ける。垂木に平行に軒天井を張ればこの形状を避けられるのだが、なぜかそうしていない家が多いのだ。
破風板に当たった雨水は、当然この部分に伝って来る。
結果は見てのとおりである。
私の経験から、ここの部位はS:1/100の立面図だけで表現されており、現場はそれを元に形を作っていることが想像される。
この結果はどうして生まれてしまったのだろうか。
・設計者
無責任な設計図書、それを描いた設計者の無知。10年後20年後にここがどうなるかなど、図面を描く時に全く考えていない。
・現場監督
耐久性を考えることの無い、無責任な施工。引き渡せばそれっきり。全ては請け負った会社のせいであり、問題が起これば会社を辞めてしまえばいい、という現場担当者の気分。設計図書の不備を指摘することもない。
・職人
何十棟何百棟もこのやり方でやってきたという感覚の麻痺。思考を停止させた職場。やはり責任は元請けの会社にあるという、責任感の希薄さ。
無知と無責任が重なり合う様子が、この傷んだ部位から想像出来る。
そして、それは住宅会社のサラリーマンだった若い頃の自分に重なる。
これは関わった個人の能力で防げることではあるが、無知と無責任を生み出す構造的な問題を思い出させる。
今からやれること、それは雨水を導くための板金をここに巻くことである。
板金を巻くためには、釘が効く下地が必要である。
破風板を固定するための野縁がしっかりしていたのは幸いである。
この形状では、最初からこうするより他に選択肢は無いだろう。
窯業系の幕板では、継ぎ手のパテと塗装の劣化に伴い、浸水の可能性がある。
足場が無いと補修が出来ない箇所の耐久性は、可能な限り伸ばすべきなのだ。(菅沼)
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